さやさんとお見合い⑧
さやさんのほうからも核心を突いた質問は無かった。同じようなことを考えているのかもしれない。お互いの飲み物が空になり、2時間が経過した頃、どちらからともなく「そろそろお開きにしましょうか」という流れになった。
店を出て駅へ向かう最中も、友達のような感覚でいろいろ話をした。
「としおさん、今日は楽しかったです。ありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございました。また連絡しますね。」
「ええ、ぜひまた。お待ちしていますね。」
少し驚いた表情のような、嬉しそうな表情のような、そんな笑みを浮かべてさやさんは言った。こちらの勘違いかもしれないが、悪いようには思われていないだろう。
そしてここからまた長い時間をかけて電車で自宅へと向かう。ここにきてドッと疲れが出てきた。初対面の相手と共にする空間、緊張の糸も切れたのだろう。ふぅ、と一息、缶コーヒーを飲む。疲れた・・・
しばらくすると携帯が鳴った。LINEだろうか?しかし今は見る気になれず、ただただ車窓をボーっと眺めていく。しばらくは考えるのを止めよう、すると意識が少しずつ遠のいていき、いつの間にか眠ってしまっていた。